「まるで人間みたいなんです・・・」
パグを飼っている方に話を聞くと、そのほとんどの人たちが、
同じ感想を口にします。
犬といえばやはり細くて長い口先の印象があるものですが、
パグにはそれがありません。
表面が平らで、凹凸が少ない顔に、まあるいクリッとした目と、
横に大きく開いた口がとても表情を豊かにしています。
それが人間の顔に近く見えて、とても親しみを感じるのでしょう。
興奮するとフガフガとにぎやかな息使いになるのも、
またパグの愛嬌の1つとして一役買っているようです。
楽しい、悲しい、寂しい…そんな様々な感情を、精一杯その表情で表現し、
顔だけで会話ができるなんて言う人もいるようですよ。
また、性格も穏やかで、飼い主にはとても忠実、攻撃的な面を見せることは
ほとんどないといわれています。
常に人のそばで、周囲の人を明るくしてくれる家族のムードメーカーとしての役割を
果たしてくれることから、1度飼ったらやめられない魅力がパグにはあります。
また、いつも明るく楽しいのが大好きなパグは、争いごとが好きではありません。
まして大好きな家族がけんかをしたりすれば、本当に涙を流すのではないかと思う位に
さみしげな悲しい表情になります。
そんな悲しげなパグを見たくない…
そんな気持ちが家族内で些細なけんかを減らす効果をもたらしてくれたりするほどです。
日常のお手入れは、短毛犬種ですのでそれほど大変ではありません。
ラバーブラシや獣毛のブラシなどを使用してブラッシングし、
必要に応じて全身を蒸しタオルで拭いてあげればOKです。
短毛犬種と言うことで、ついついサボりがちになるブラッシングですが、
皮膚は刺激を与えることで強くなります。
定期的なブラッシングは皮膚を鍛えるためにも必要なお手入れの1つです。
強すぎず、弱すぎず適度な刺激を与えるよう、こまめにブラッシングをしてあげてください。
そして、パグのお手入れで特に重要なのは、顔のしわ。
しわの間はとても汚れが溜まりやすい部分です。
この部分を不潔にしていると、そこに湿疹などの皮膚トラブルが起き、影響が全身に及んできます。
脚で顔を掻いた後に他の部分を掻くことで、その汚れが他の部分に移ってしまうからです。
食後や外出後には、やわらかい蒸しタオルでしわの間までしっかりと丁寧に拭いてあげましょう。
顔のしわまできちんと清潔にしていれば、それほど体臭は気にならない犬種ですが、
冬場は月に1回ぐらい、夏場は2~3週間に1度はシャンプーをしてあげた方がいいでしょう。
シャンプーやリンスが残っていると皮膚トラブルの原因になりますので、しっかりとすすぎ、
シャンプー後のドライングも完全に乾くまでキチンとするように注意してあげてください。
また、大きく突き出た目をしているパグなので、その目には十分な注意が必要です。
お散歩中に草むらで傷がついてしまったりすることも多いので、
普段から異常がないかどうかチェックをしてあげてください。
少しでも傷があったりなどの異常が見られたときは、すぐに動物病院で診察を受けましょう。
また、目やになどついているときは、やわらかいガーゼなどでやさしく拭いてあげましょう。
たれ耳のパグは、その耳の中もしっかりとしたケアが必要です。
耳が垂れていることで、湿気が溜まり、じめじめとした環境になりやすいので、
お手入れを怠ると耳ダニや外耳炎などの原因にもなってしまいます。
イヤーローションなどで、力を入れすぎないように注意しながらやさしく拭いてあげてください。
パグはその体の構造上からみても、あまり過度な運動をさせるのはよくありません。
しかし、1日中部屋に閉じこもっていると、運動不足になり、肥満などの原因になってしまいます。
(空気を吸っていても太るといわれるほど、犬種的に太りやすい体質です。)
犬にとっては、外に出ることがストレスの発散にもつながりますので、
安定した気質を保ち、穏やかに暮らすためにも、適度な運動は必要です。
暑さ寒さに弱い犬種でもあるので、季節に合わせた時間帯を選び、
適度なスピードで20分~30分のお散歩を朝夕の2回行えるのが理想的です。
室内や庭などで自由運動が可能であれば、おもちゃなどを使って、
コミュニケーションをとりながら運動するもの良いでしょう。
パグだけでなく、同じ特徴を持つすべての犬種に当てはまることですが、
短頭蓋犬種…つまり鼻ペチャ顔の犬たちはとても暑さに弱い犬種です。
時にはそれが原因で死んでしまうこともあります。。
犬は暑くなるとハァハァと口で大きく息をして、舌から水分を飛ばすことで体を冷やします。
でも、パグのようなクシャ顔の犬たちは、その口内の特殊な構造から、
その激しい呼吸が上手にできません。そのため、大きく息を吸おうとすればするほど、
うまく呼吸ができず、呼吸困難となってしまうことがあるのです。
この呼吸障害は「短頭蓋犬症候群」と呼ばれ、クシャ顔の犬を飼っている方なら、
常に気をつけなくてはいけないことの1つです。
特に次のような症状がひどく見られるときは、早めに獣医さんに診てもらいましょう。
・常に口をあけて呼吸をしている
・呼吸音が普段より大きい
・今までよりイビキがひどくなった
・普段どおりの運動ができなくなった
・ゲェゲェとしながら、あぶく状になった唾をよく吐き出す
短頭蓋犬症候群の原因が、軟口蓋と言う器官が長いことによって起きている場合などは、
その軟口蓋を外科的に短く切除することによって症状を改善することができます。
症状自体が軽くても、苦しそうな呼吸が気になる場合は、一度獣医に相談するのがよいでしょう。
また、体温調節のための激しい呼吸が上手にできないと言うことは、
暑いときの体温調節自体もうまくできていないと言うことになります。
そのため、熱中症にかかりやすく、それもまた、ときには死に至る危険な病気です。
普段から次のような暑さ対策をしっかりと行い、少しでも異変があった場合は、
どんな状況でもすぐに病院へ行くようにしましょう。
・日差しが強く、気温が高いときは運動を控える
・日陰を選んで歩くようにする
・車の中には絶対に置き去りにしない
・外出時は必ず水を用意しておく
・暑い日に外で遊ぶ場合は、プールなどを用意しておく
・暑い日に外出する場合は、冷たいタオルや水で体を冷やせるように準備しておく
・運動は犬のペースで行い、無理強いはしない
・休みたそうにしているときは、自由にやすませてあげる
万が一、暑さによって犬が倒れたりした場合は、まずはすばやい応急処置が必要です。
体に水をかけるなどをして、とにかくすぐに体を冷やすことを最優先に行いましょう。
すでにご紹介した呼吸障害以外にも、パグが気をつけたほうが
よい病気はいろいろとあります。
中でも特に怖いのが、パグ脳炎…壊死性髄膜脳炎です。
この病気が見つかった当初は、パグばかりに発症している病気
だったために、この名前がつきました。
現在では、マルチーズやヨークシャテリアなど、他の犬種でも
発症が報告されています。
脳全体にわたって壊死や炎症が発生する病気で、痙攣や歩行
困難、失禁など、様々な神経症状を表す慢性的な脳疾患です。
この病気にかかっている犬は、生後7ヶ月から7歳ぐらいまでに発症することが多く、
早ければ数日で死に至ることもあります。
何の前触れもなく、突然神経症状が現れるのが特徴で、遺伝性疾患ではないかと
言われてますが、その原因はまだはっきりとはわかっていません。
診断についても、脳脊髄液検査やMRIなどが必要で、
大学病院など設備が整った大きな病院でなければ行うことができません。
また、検査の際に全身麻酔が必要になり、検査自体に大きなリスクを伴います。
そして、現在でもその効果的な治療方法は見つかっていないため、病気が見つかっても、
炎症を多少抑える程度の薬物療法を行うくらいしかできないのが実情です。
全体から見れば、発症する可能性は非常に低いですが、注意のしようがない病気ですので、
親兄弟含めて、親族で発生した子がいないかどうかの確認程度はしておいたほうがよいでしょう。
他にも、大きくやや突出した目をしているパグには、目のトラブルが多くあります。
眼球の最も表層の角膜が炎症を起こす角膜炎や、角膜の一部に潰瘍ができる角膜潰瘍など。
まつげで角膜がこすられることでメラニン色素が発生する色素性角膜炎やドライ・アイなど、
その種類はとてもたくさんあります。
普段から目の様子には注意を払い、少しでも異常が見られる場合には、
すぐに動物病院へ行くようにしてあげてください。
その他、パグがかかりやすい病気や遺伝性疾患として、
膝蓋骨脱臼、レッグ・ペルテス病
膿皮症などの皮膚トラブル、口蓋裂などがあげられます。